2015年6月14日日曜日

ほたる

ある人から、佐礼谷のホタルマップというのをもらった。中山町に佐礼谷という地区があり、蛍の名所だという。
かっこいいだろう?!
なかなかの上質紙がおごってある。
イラストが楽しい。
最近は、東京都心の渋谷の街の真ん中でも見られるとかで、もちろん都会人でもないライネケとネコパコは、蛍とか別に珍しくもないんだが、まあ、はなしのたねに、一度見に行ってみるか、という6月13日、土曜日の暮れなずむころ、物好きに出かけた。

佐礼谷は、松前町のお隣りの伊予市に属する中山町の一部だ。伊予市市街より56号線を南下すると犬寄峠を越えたところを左に、山の中に入っていく。

スイートスポットが10箇所ほど
うっかりヤブに踏み込むとマムシがいるんだと。
へそまがりのライネケは、最後の10番から逆に回ることにした。
どうやら、川沿いに見所があるらしい。あたりまえだ。ホタルは川で生まれ、カワニナやらを食べて成長するんだもの。

最初は薄暮だったが、そうこうするうちに日が暮れ、とっぷりと暗闇に。その中を、車の中でルームランプをつけ、マップを片手にホタルの見所を探す。

とある橋の上で目をこらせば、川べりに小さな光を見つける。と思えば、あっ、あそこにも、ほら、そこにも。

写真を撮っても、もちろん、真っ黒だ。特殊なレンズでなければ、こういう写真は撮れない。分かっているのに、カメラを向けたくなるものなんだね。各スポットにはこんな、反射板付きの標識が立っている。

周りの真っ黒なのは
別に細工をしたわけでなく
暗闇でシャッターを切ると
こういう画像になるんだ
ちょっとシュール
自治会の人たちは、村おこしのために一生懸命工夫してるんだろう。それは分かるが、暗闇の中、これくらいでは無理。でも、ありがとう。

8箇所くらいの見所を見て回った。

山側の流れに沿って、急に光点が現れると、それに呼応するように、わずかに遅れて、光点が、二つ、三つと灯り、消える。あちらで、こちらで、川の下流から、上流に向かって、光点の小集団が移動していく。

ずいぶん、たくさん見えるもんだ。不思議だ。あやしく、きれいだ。8時半ころが、一番たくさん見えるんだという。気がつくと、いつの間にか、そんな時間になっている。

よくみると、意外に近くにもいたり、川からずいぶん離れた木立の間や、空高く舞い上がるのもある。湧きおこるように光る。

山あいのまっ暗闇のなかで、くろぐろとした山に囲まれて空が濃い群青色に見える。その中を、高いところを、光点が灯り、消えて行く。

「あくがれ出(いづ)る たまかとぞ 見る」

どうせ大したことないんだろうけど、暇つぶしに行ってみるかと、軽い気持ちで出かけたのだった。ネコパコと二人、まっ暗闇のなか、数十分をさまよい、立ち尽くした。お互い何を見てるのか知らないまま、何を考え、どんな気持ちでいるのか、分からないままに、時が過ぎて行った。私たちは、ほんのつかの間、出会い、ともり、そして離れ離れになり、消えるのだ。



「じゅうみんじち せいねんぶ」の皆さん、来てみてよかったですよ。いろいろ感じ、考えさせられました。重ねてありがとう。

これは、単なる功利的な村おこしのための作業でなくて、多分、人々というものの心の優しさの表出なのだろう。もののあわれ? そういうものなのかもしれない。